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総務部の「悩み」大研究

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ゼロから始めるファシリティマネジメント


ファシリティマネジメントを導入して、効率的な施設の管理とレベルアップを図りたいのですが、その最初の手順がわかりません。何か、簡単なマニュアルはありませんか?


1.FMの概念


 ファシリティマネジメント(FM)とは、財務的な視点によって施設を数値管理し、合理的なコストの削減と、ワークプレイス環境の向上を進めていく手法です。
 ちなみに、いち早くこのような概念を採り入れた欧米の企業では、FMの領域は施設の日常の運営維持に留まっていますが、日本ではオフィス戦略や計画の立案から、プロジェクト管理、運営維持まですべてを含み、総務部門で担当することは一般的になっています。


日本と欧米のFMの違い

2.FMの機能と業務




 企業におけるすべての業務は、Plan(計画)→Do(実施、行動)→Check(評価)→Action(改善)の4段階によるPDCAサイクル(デミングサイクル)によって進められなければなりません。FMにおいてもこれは同じで、ファシリティマネジャーはこの全体を統括し、必要に応じて専門の管理者を配置しながら、経営者的な視点でFMを遂行していきます。


3.FMの業務範囲


 FM担当者の仕事は多岐にわたります。それを簡単にまとめれば、以下のような領域において、ワーカー向けのサービスを行わなければなりません。さらに継続してサービスの質を維持するためには、各項目について詳細なマニュアルを作成するのもファシリティマネジャーの役目です。

■FMのScope of Work


■FMのサービスメニュー


4.FMを導入するメリット


 それでは、FMを導入することで、企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。
●オフィスコストの数値化による合理的な経費削減ができる
 まず第一に、オフィスコストを数値化することで、効率的な削減が可能です。
 日本においてこの分野の先駆者の一人であるエクソンモービルの川村裕さんは、「数値化できないものは管理できない」という名言を米国から持ち込んで日本で提案しています。確かに、コストダウンを進めるのに、現状の施設管理費の内訳が正確に把握できていなければ、どこから手をつけていいかわかりません。しかし現実問題として、これまでの日本企業では、本社だけでなく全国の支社や営業所などの施設費の項目別一覧すら作成せずに、「オフィスコストを下げなければ」と対策を練っていたのですから、これでは有効な手段を講じられないのはあたりまえでしょう。
 オフィスコストの数値化を行えば、社内の事業部ごとに項目別の金額を比較し、最低必要ラインに合わせる「社内ベンチマーク」の手法で合理的な経費削減ができますし、ファシリティマネジャーの団体であるJFMA(社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会)などの人脈を活用して社外とのベンチマークを行うことも可能です。その結果、「今後、何から手をつけるべきか?」という先見性が備わるのです。
●プランの「選択肢」が増える
 FMに関する国内外の成功・失敗事例は、さまざまな報告書の形で収集が可能です。もともとFMにおいては、実施した企業がその内容を秘匿するのではなく、「広く公開することでベンチマークなどによってさらなるレベルアップを図ろう」という思想に基づいたものです。このため、ファシリティマネジャーとして仕事を始めれば、すぐに同じ専門家同士としての交流が可能になり、情報が得られます。その結果、「次に何をしたらいいのか?」というFM実施プランの選択肢は大幅に増えるのです。
●品質・コスト・供給のバランスが保てる
 FMを導入せず、たとえば全社一律に「オフィスコストの20%カット」という命令を出す方法では、それまでコストセーブをしてきた事業所と、手つかずの事業所の間でさらに格差が目立つようになり、ワーカーからも不満が出ます。これでは、オフィスの生産性向上というもう一つの重大な経営課題を解決することはできないでしょう。
 FMの手法によってオフィスコストの数値化を実現すると、コストと品質、供給状況などを総合的に見ながら、バランスを考えて改善が可能です。その結果、ワークプレイス環境を向上させながらのコストダウンもできるようになるのです。
●経営トップへのアピールができる
 これらのFM的な手法は、すべて経営者の視点によって進められますから、必然的にファシリティマネジャーは「経営トップの片腕」としての役目を果たすことになります。そして経営レベルのファシリティ管理を実施することで、社内における自分たちの位置づけを明確にできるのです。


■他社のFM実践事例
企業・団体名
FM実践事例内容
1  日本ヒューレットパッカード
都心本社オフィスを八王子に移転し施設運営費を削減
2  オムロン
本社部門のプロフィットセンター化による業務の効率化
3  NTTファシリティーズ
FMデータベースの構築と実践
4  大阪ガス
ドームシティガスビルにおける省エネルギーオフィスづくり
5  大林組
品川インターシティ内の本社オフィスの計画と移転統合化プロジェクト推進
6  外資系銀行
FM部門をプロフィットカンパニー化
7  北九州市建築・設備保全公社
計画保全を主目的にした公共建築物のデータベース構築と運用
8  サンド薬品 
本社オフィスのダウンサイジングを目的とした「スリム・プロジェクト」の成果とその評価
9  JRバス関東
ノンテリトリアル・オフィスの導入による組織改革
10 住金物産 
企業合併による異なる企業文化の統合におけるFM管理体制の役割とその方法
11 住商ファイングッズ  
全入居者参加型のオフィス増床・改修プロジェクトの計画と管理
12 セイコーインスツルメンツ
分社 株式会社シティ・サービスへの清掃業務アウトソーシング
13 ソニー
全社的POEの実践と活用
14 東京海上火災保険
オフィスづくりマニュアルにもとづくFMの導入
15 東京電力
技術保全センターにおける効率的なオフィスレイアウト管理システム
技術保全センターにおける合理的なエネルギー管理を志向した施設保全管理(FM)
16 富山化学工業
FMデータベース構築による戦略的オフィスコストの削減と本社リニューアル計画立案
17 日本アイ・ビー・エム18 日本設計
グループアドレス・オフィスの開発
モバイルワークを支援するオフィスづくりー「モバイル・オフィス」
総務業務のペーパーレスシステムの開発
18 日本設計
建築設計事務所におけるオフィス統合化及びオフィス標準化によるプロセスコントロール
19 富士通
丸の内センタービル リニューアルプロジェクト
20 プライスウォーターハウスコンサルタント
ワークスタイルの変革を具現化するオフィスづくり
21 ベネッセコーポレーション
利用者満足度調査(POE)によるファシリティの改修計画の要求条件抽出
22 モービル石油
グローバルなFM管理体制とFMアウトソーシングの利用
23 郵政省
大臣官房施設部におけるファシリティのロングライフ化と計画的管理手法の確立
出典:1999JFMA-FM事例集

5.FM導入の目標と実践方法


 FMを導入する意義についてはおわかりいただけたと思います。それでは、実際にFM的な施設管理を始めるときに、まずどんな目標を掲げればいいのでしょうか。
 私が企業にFM導入のコンサルティングを行うとき、最初に提示するのは、次のようなプランです。
それは、スタートして2年以内に、
・オフィスコストの適正化
・ペーパーレス化によるオフィス劣化の防止
・新しいワークスタイルの導入と、それに合わせた新しいオフィス環境の創造

を実現してもらいます。
 そのための具体的な施策と、スケジュールモデルをあげておきましょう。

●総経費に占める施設運営費の把握と適正化
 すべての事業所の施設運営費を項目ごとに分類し、社内外とのベンチマークなどによって適正化を図ります。項目については、FMのガイドブックなどを参照にしてください。
●午後8時以降の残業フロアの設置による
 残業時間の削減と施設運営費の削減
 深夜までオフィスのすべてを利用可能にしておくと、空調や電気などで膨大なコストの無駄が生じます。もちろん、業務の効率化を図って残業時間を減らすのは、人件費の圧縮にもつながって有効ですが、同時に残業フロアの導入など、施設運営費を少なくする工夫をしてください。
●会議室利用率65%以上の
 実現による無駄な会議の削減と施設運営費の削減
 会議室の利用率はこのくらいの数値が適正です。効率からいえば70%以上にする方法もありますが、この場合はワーカーにとって「希望する時間に部屋がとれない」という不満が増大するので、打ち合わせにも個人の作業にも利用できるようなフレキシブルなスペースを別に用意すべきでしょう。また、施設の見直し以前に、無駄な会議を減らす努力を、関係各部門との協議のうえに進めることも大切です。
●個人文書1人あたり1ファイルメーター以下の実現による
 オフィス劣化の防止
 A4サイズの書類を重ねた場合、1メートルの厚さになる量を1ファイルメーター(fm)といいます。個人文書については1fmを目安に標準化を図り、保管スペースを限定してしまうことで、自動的にペーパーレス化が進み、スペースの有効活用を促します。
●在席率40%以下の部門へのフリーアドレス、フレックスタイム、
 およびホームオフィスの導入による、オフィス生産性の向上
 在席率が高い部門でもユニバーサルオフィス(組織変更に際して、人だけを効率よく移動させるレイアウト固定型のオフィス)の導入でスペース削減が可能ですが、さらに固定席の必要がない部門では、大胆なオフィススタイルの変更も考えてみるべきでしょう。ただし、専用のデスクが無くなるのはワーカーにとっての不満につながり、モチベーション低下も招きかねないので、共有スペースの充実や便利なシステムの導入など、サービスというソフトウェアの質的向上で満足度を高める努力も必要です。


■スケジュール


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