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モトローラ株式会社 本社オフィス

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モバイルワーカーへの移行という方針を満足度を維持したまま実現するための工夫

今回のオフィス構築プロジェクトにおいて、伊藤氏が「最も工夫を要した」と語るのが、フリーアドレスを一部の社員に導入することだった。
「ガイドラインには、Mobile Worker(フリーアドレス使用者)を社員数に対し20%以上適用するとあります。したがって、オフィスを新しくするところでは、どこでもこの規定に従わなければなりません」(伊藤氏)

旧本社では、まだこの項目を遵守する段階ではなかったためすべて固定席だっただけに、どういう手順でMobile Workerを選べばいいのか、対象者の配置をどうするかなど、考えなければならないことは多い。
「最初に始めたのは離席率の調査でした。旧本社で2回、2週間単位で行いました」(伊藤氏)

その結果、自分の席にいないワーカーの比率は各部門平均で30%強であり、20%のフリーアドレス化が不可能ではないことがわかる。
「その数字を示し、技術開発や経理などを除いた各部門長に20%以上のMobile Worker対象者を選出するように要請しました。人選を委ねることで、よけいなトラブルが起きないようにしたのです」(伊藤氏)

併行して、伊藤氏はオフィスのレイアウトを進める。
「フリーアドレス化には思ったより抵抗がなく、業務委託社員を含む全従業員数のMobile Worker予定者数は28%になっていました。最終的には固定席71%、Mobile席(フリーアドレス)20%の比率でレイアウトを行い、不足分をミーティングブース席で補い、全員が集まっても席は必ず坐れるようにしてあります」(伊藤氏)

このとき、さらなる工夫をしている。
「Mobile席は明るい窓際に沿って配置し、しかもスペースも少し広めにしました。つまり固定席よりも環境を良くすることで、自席が無いことのマイナスをカバーするようにしたのです」(伊藤氏)

しかもMobile Workerはどこでも自由に移動して仕事ができるのに対し、固定席ワーカーはMobile席の使用を禁止した。
「会議室なども含めれば、たとえ全員がオフィスに集まっても座る席は確保されています。したがってMobile Workerだからといった不利はなく、かえって便利だと人気があるほどですね」(伊藤氏)

6割以上のワーカーが満足している新オフィス独自のワークステーションにも不満の声はわずか

そのほか、モトローラ株式会社の新本社オフィスの詳細については写真を参考にしてもらうとして、ここでは、移転後に行った従業員へのアンケートの結果から、入居後の評価を見ていこう。

まず、Mobile Worker (フリーアドレス使用者)の導入については、次のようになっている。
「特に反対する声が多いわけではありませんし、あまり関心の無い人が4割を占めているということを考えれば、部分的なMobile席の導入は、今のワーカーにとって受け入れられる変化だということでしょう」(伊藤氏)

ただし、この点については、事前の充分な調査や検討が必要だと強調している。
「技術開発や経理など固定席でないといけない部門があることから、ついつい営業にしわ寄せのいく企業が多いと思いますが、一方的に彼らの席を奪うだけでは反発にあってしまいます。部門長との連携によって作業を進めるなど、満足度を下げないための工夫は必要でしょう」(伊藤氏)

ちなみに、Mobile Workerはノートパソコンや書類、私物などを自分のロッカーに保管し、必要に応じて使用するデスクまで運んでくるのだが、移動に不自由を感じないように、荷物をまとめて運べるバスケットボックスを用意した。
「ちょうどいいサイズのものがなかなかなく、かなり苦労して探しました。しかし、こういう部分まで手を抜かないことがオフィス改革を成功させるポイントであり、FMの仕事の一部なのではないでしょうか」(伊藤氏)

次にワークステーションの広さと高さについては、このような結果になった。
「ワークステーションの大きさはガイドラインに沿っていないだけに苦情が出るかと心配していましたが、思ったほど問題はありませんでした。またパーテーションの高さについては、1.6mだったころより明らかにコミュニケーションはしやすくなったと評判は上々です」(伊藤氏)

そして、南麻布から大崎に場所が移ったことについては、事前に従業員の居住分布なども調べていたこともあって、「便利になった」との声が多かったという。
「立地としては南麻布のほうが都心に近いのかもしれませんが、入居したシンクパークタワーはJR大崎駅に直結しており、ほとんどの社員にとって通勤時間が短くなったはずです。さらに新幹線に乗るにも空港に行くにも便が良く、交通の利便性では都内でもトップクラスだという気がします」(伊藤氏)

また、このビルは飲食店や物販店も多数入り、駅の反対側の施設も利用できることから、食事環境についても満足度は悪くない。
「南麻布のときは周囲に飲食店が少なかったことから、オフィス内にカフェテリアを設けて食事ができるようにしていました。移転してそれがなくなったため、若い社員の中には『食事代が上がった』という人もいますが、全体的には食事や仕事が終わっての飲み会などを含め、便利になったという評価のようです」(伊藤氏)

総合評価を見ても、「非常にいい」「いい」が6割以上を占めており、今回の移転プロジェクトは大きな成果をあげたといえる。

オフィス内のデザインは世界共通

モトローラではオフィス内部のデザインや什器類に関しても詳細なガイドラインを設けている。
「内装から室内の装飾、家具の一つひとつに至るまで、米国本社のFM部門で指定したものしか使えません。このため、私たちはその条件の下でレイアウトを完成させていくのです」(伊藤氏)

この方法は、一見、不自由なように思えるが、質の高いデザインをどのオフィスでも実現できるうえ、備品類はまとめて調達できることからコスト面でも大きなメリットがあるという。
「モトローラグループとして一定レベル以上の職場環境を整備するにはガイドラインは欠かせません。ただ、オフィスは生き物ですから、国ごとの事情に合わせた調整や最適化は必要。つまり世界基準を満たしたうえで、個々のワーカーに不満を感じさせないようにすることが、ファシリティマネジャーの腕の見せどころなのです」(伊藤氏)