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トムソン・ロイター・ジャパン

世界最大の金融情報サービス会社が目指したのは顧客と社員、社員と社員の関係を深めるオフィス

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プロジェクト概要

  • トムソン・ロイター・ジャパン
    古川 弘氏
    マーケッツ・ディビジョン
    ビジネス・ディベロップメント・ダイレクター
  • 明豊ファシリティワークス株式会社
    大貫 美氏
    常務取締役
    オフィス事業部長
  • 明豊ファシリティワークス株式会社
    小野 宗久氏
    デザイン部
    デザインディレクター

150年以上もの歴史を持ち、ニュース通信社の代名詞的存在ともいえるロイターは、1980年代以降、報道以外の分野への進出を積極的に行ってきた。銀行や証券、保険会社、政府系機関などに向けた金融情報サービスに事業の軸足を移し、さらに今年4月にはカナダの情報サービス会社トムソンとの経営統合を果たしたことで、この分野では世界最大規模の企業になっている。Thomson Reutersのアジア地域での最重要拠点であるトムソン・ロイター・ジャパンが新しくオープンしたオフィスは、そんな「ロイターの挑戦」を強力に支える存在だ。1月に竣工した赤坂Bizタワーの30階の半分はセミナーやイベントのためのスペースに充てられ、顧客との接点の拡大によるカスタマーサービスの向上を目指す。そして29階を含めたワークプレイスはコミュニケーションを活発にする先進のデザインを採り入れるなど、まさにオフィスを経営の力に活かそうとしている。

先進オフィス事例研究 はやわかりメモ
ようやく実現したオフィス移転
経営環境や組織の変化が日常茶飯事の時代、計画通りにオフィス戦略を遂行するのが難しいこともある。しかし、経営とオフィスが一体である以上、ある程度の段階で思い切ったリニューアルは必要。
目標を明確にし、デザインは専門家に一任
オフィスのリニューアルにあたっては、それによって経営上のどんな課題に応えていくのか、目標となるポイントを明確にしておかなければならない。その段階でピントが正確に合っていれば、オフィスデザインの専門家への発注もしやすい。
オフィスデザインは受付の外にも及ぶ
ブランディングを考えるなら、ビル全体を一つのメディアと考え、さまざまなPR手段を考えるべき。モニターによる動画情報、外から眺めた受付の風景など、すべてのビジュアルイメージは会社の顔になる。
社外の人と交流するスペースの充実
ネットを含む電子媒体による金融情報サービスを行う企業であっても、カスタマーと直接会って交流する機会は大切。そのための場は社内に設け、最高のデザインでお客さまを迎えるべき。ガラスパーテーションによる仕切りは、明るさとフレキシブルな空間を実現する。
内階段を核としたコミュニケーションオフィス
執務スペースが数フロアに分かれる場合は内階段が効果的。縦の動線を確保したうえで、そこを中心に横の動線をつなげていけば、自然に交流が生まれる。また会議室や打ち合わせコーナーはバリエーションを豊富にすることでシーンの演出を。
自由席のオフィス「フリースタイル」
フリーアドレスという言葉は「席を人数分用意しない」というイメージが強く、反発を買いやすい。全員分の席があるならフリースタイルという名称で自由席にする方法がある。ただし「個人のものを置きっぱなしにさせない」「ごみ箱をデスクの下に置かず人の流動性を高める」などの工夫も必要。
オフィスに曲面のデザインを!
直線や平面で構成されがちなオフィスだが、曲面を導入すると自然に隙間ができ、空間的なゆとりが生まれる。それによるスペースの無駄は思ったより少ない。

経営環境や組織は常に変化していくのだからオフィスもリニューアルしなければならない

今年1月に赤坂Bizタワーに移るまで、ロイター・ジャパンの東京オフィスは神谷町駅前のビルにあった。結果として約25年間、同じ場所にいたのだが、その間にも移転計画は頻繁に検討されていたという。
「六本木ヒルズや泉ガーデンタワー、東京ミッドタウンなど、新たな大規模ビルの建設が発表されるたびに、移転したらどうなるかといったシミュレーションをしてきました。しかしそのたびに経営環境が変わったり、人員計画の見直しなどがあり、断念してきたのです」
こう語るのは、トムソン・ロイター・ジャパンで今回の移転プロジェクトを統括した古川弘氏だ。

ロイターにとって、ここ10年間ほどは「事業や組織の刷新が日常茶飯事」といわれるほどに激動の時代だった。
「かなりの痛みを伴うリストラクチャリングや経営改革の連続で、じっくりオフィス計画を立てるどころではありませんでした。このため、情報サービス大手のトムソンとの経営統合が決まったときには驚いたものの、すぐに『今の時代にはよくあることだ』と妙に納得してしまうほどだったのです」(古川氏)

しかしそんな古川氏にとっても、今年1月の赤坂Bizタワーへの移転だけは、絶対に成功させたいプロジェクトだったという。
「事業内容も組織も変わっていくのにオフィスだけが古いままという状態は、私にとって耐えられないものでした。ロイターという会社が新しくなっていくのであればオフィスも変えていかなければならない。今回のプロジェクトには、まさに不退転の覚悟で臨んでいたのです」(古川氏)

計画の途中でトムソンとの経営統合が発表されたが、幸い、統合の核となる金融情報部門の組織の枠組みは大きく変わることがなかった。
「両社の間では若干の人の異動はあったものの、竹橋のパレスサイドビルにあるトムソンのオフィスはそのまま残し、ロイターのオフィスだけをリニューアルする形で計画は実行できました。その結果、ほぼ希望通りの理想のオフィスを実現できたのです」(古川氏)

カスタマーサービスの向上、ブランディング帰属意識を高めることが移転の3つの目的

ここで、今回の移転において古川氏が目標として掲げた点を整理しておこう。

1.カスタマーサービスの量と質の向上

今やロイターの売り上げの9割以上は金融情報サービス事業が占めている。それだけに、この分野のユーザーに対して、直接、トレーニングやセミナーを行い、提供する情報をもっと活用してもらうことが、顧客満足度の向上=業績の拡大へとつながっていくのだが、神谷町のオフィスではそのためのスペースが充分になかった。
「セミナーを開催する場合、その規模や内容等によってホテルなどの外部施設を利用する場合とオフィスを利用する場合がありました。オフィスを利用してセミナーを開催する場合は、3つの会議室の仕切りを取り外して70-80名を収容するスペースを確保したのですが、その為にスタッフを動員して数時間かけて準備をしなければなりませんでした。従って、セミナーを開催する日の午後は会議室が不足することになります。機動性の点において問題があるだけではなく、見栄えもよくなかったのです。正直言って、お客さまを呼ぶのが恥ずかしく、スタッフにとっても誇りを感じられない雰囲気でした」(古川氏)

「情報サービスにおいてスピードは非常に重要です。ところが、社外の会場を使うとなると数ヵ月前から会場の予約を入れなくてはならず、昨今の金融マーケットの早い動きに対応したトピックのセミナーを開催することは出来ませんでした。すなわち、お客様に快適な環境下でのセミナーを開催するとなるとタイムリーさに目を瞑らねばならず、マーケットを動かすホットな話題に焦点を当てたセミナーは参加希望者が多いのにも拘らずオフィスを使わなければならないというジレンマに悩まされていました」(古川氏)

このため、新オフィスではカスタマーサービス用スペースの確保と質的向上が大きな課題になっていたという。

2.効果的なブランディング

報道機関としてのイメージが強いロイターにとって、金融情報サービスに強い会社であることを広く知ってもらいたいという要望がある。神谷町では駅に広告看板を出していたが、もっと効果的なPRの方法を模索していた。
「オフィスは社内のスタッフだけが使うものではありません。多くの訪問客がある一種のメディアなのですから、それを使ってのブランディングもオフィス戦略の一環だと考えていました」(古川氏)

3.スタッフエンゲージメント(帰属意識)の強化

デザインなどオフィスの質を上げることは、社員の帰属意識を高め、モチベーションの向上といった相乗効果をもたらす。
「正直いって、これまでのオフィスは『働く場所さえあればいい』といったレベルで、デザインも家具メーカーにまかせてしまうなど、おざなりなものでした。しかし会社の目指す方向がはっきりしてきたからには、それを社内外に伝え、共感してもらうためのオフィスデザインが必要になります」(古川氏)

このように、今回のプロジェクトではオフィスづくりの目標が明確になっていたため、この分野で実績のある専門家に委託することが決まった。
「以前、テレビ東京系の『ガイアの夜明け』で明豊ファシリティワークスさんのオフィスづくりの実例を見て(『オフィスを壊せ!~儲けるための職場改革~』 2005年11月8日放送)、オフィスデザインのもたら効果については知っていました。それだけに、お願いするならここしかないと思っていたのです」(古川氏)

声をかけられた明豊ファシリティワークスではオフィス事業部長の大貫美氏が中心となってチームを組み、設計はデザインディレクターの小野宗久氏が行った。

「明確なコンセプトと経営層の意思統一がありましたので、私たちはそれを具体的に形にしていくだけです。当社は迷うことなく思う存分仕事ができ、満足のいく結果に終わったと信じています」(大貫氏)