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株式会社ロックオン 東京支社

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企業のステークホルダーのほとんどは所在地を文字情報としか認識していない

ロックオンが最初に東京に事務所を構えたのは、創業5年目の2005年7月のことだ。

「最初は渋谷のマンションに準備室を開き、3ヵ月後に千代田区神田神保町に20坪ほどのオフィスを借りました。もともとデザイン会社が入っていた物件をそのまま引き継いだため、大きな窓の明るいオフィスで、天井高も3メートルあり、満足度はかなり高かったのです」(岩田氏)

最寄り駅は地下鉄の神保町。出版を初めとするマスコミ系の会社が多い情報発信エリアであるうえ、大手町、新宿、渋谷へと乗り換えなしで行ける利便性の良さも魅力でしたが、唯一、町のイメージが気になっていたという。

「少なくとも関西のほとんどの人にとって神保町はあまり知られていない町です。だから、サイトで当社の住所を調べても、場所がイメージできない。
これは損だと思いましたね」(岩田氏)

現在のようなネット社会では、住所は「場所」を示すだけでなく、イメージを与える「情報」としての役目を強く果たす。たとえ隣接している駅であっても、住所によって印象が変わることはよくあることだ。

「企業のオフィスまで訪れてくる人はわずかで、大半の関係者はその立地や住所という文字情報で知るだけなのです。それだけに、所在地によるイメージの選択は、まだ社名が浸透していない企業にとって重要な宣伝戦略の一つなのではないでしょうか」(岩田氏)

神保町のオフィスには約2年半、入居していましたが、応接にも使える独立した会議室がなかったことから業務が拡大するにつれて不便を感じるようになる。そして2008年に移転を決意したときには、このような考えから徹底的な住所の検討を行った。

「IT系の会社が多い六本木や恵比寿は、逆にイメージが強すぎて他社との差別化ができないので避けたいと思いました。一方、丸の内は、たくさんの大手企業が集積していますが、私たちのような新進の企業が少なく、迅速さやスピード感といったイメージではない。そんな中で候補物件から選んだのが、銀座だったので す」(岩田氏)

最終的に入居を決めたビルは松坂屋の裏手に位置し、銀座駅から徒歩3分圏内だ。

「まさに銀座の中心地であり、イメージとしては最高にいいですね。銀座は同業が少ないだけに、私たちにとって“色”をつけやすいのが魅力です」(岩田氏)

最近は多くのブランドショップの進出で、若い世代の人気も上昇しているだけに、「大阪本社の社員がうらやましがる立地」(岩田氏)とのことで、東京事務所の移転は社内的にも大成功だったようだ。

「窓の外を隠す」のも室内デザインの一環。天井を外せるビルであれば高さを稼げる

立地としては希望通りの銀座だが、繁華街だけに、オフィスづくりにはさまざまな工夫をしている。

「ビルのワンフロアを借りたため、片側に広い会議室を設けても3面窓という明るいオフィスになったものの、周囲には居酒屋なども多く、なんとなく仕事の意欲が削がれるんですよね(笑)。そこで、障子をイメージしたロールスクリーンですべての窓を覆い、外の景色を隠すようにしました」(岩田氏)

苦肉の策だったが、結果として室内を柔らかい光が満たし、落ち着いたムードになったのは従業員にとても好評だという。
もう一つ、ビルの弱点をカバーする目的で行ったのが、天井板を抜く工事だ。これにより、もともと2500ミリだった天井高は2700~2800ミリになり、室内は一気に広々とした印象になる。
「天井高を確保することは条件の一つでした。幸い、入居したビルは2年間の定期借家契約で借りられたうえ、その後、建替計画があることから内装工事はかなり自由に行えたのです」(岩田氏)

「執務スペースは白を基調にした落ち着きを感じられる空間に、会議室は黒などの強い色による動きのある空間にすることで変化を付けました。またエントランスは曲面の壁で囲み、他の部屋との違いを強調しています」(岩田氏)

現在、東京事務所の収容人数は約10人。余裕をもってデスクを置いているために多少の増員は可能だが、条件が変われば同じ場所にこだわることなく、次の移転を検討する予定でいるという。
「今はどんな企業でも数年後の事業環境は予測できません。それだけに、常にオフィス移転を念頭に置いて経営をすることが大切なのではないでしょうか」(岩田氏)

オフィスは企業を成長させる源だから経営計画に基づいた先行投資が重要だ

東京事務所の移転に続き、大阪の本社も今年8月に大阪西梅田に竣工する「ブリーゼタワー」に新設する予定だ。株式会社サンケイビルが建設中のこのビルは、超高層でありながら「窓」によってフロアに自由に外気を取り込めるなどの工夫で知られる最先端オフィスであり、本誌でも何度か紹介してきた。岩田氏が次の移転先として選んだのも、ビルによるインパクトが自社の理念と通じると判断したからである。

「単純に言えば、クオリティの高いビルに入ることに意味があるのです。
オフィスとしての使いやすさ、立地条件、住所のイメージなど、どれをとっても優れており、ほとんどの場合、賃料以上のメリットがありますからね」(岩田氏)

もちろん、無条件に投資を続ければいいというものではなく、経営状況とオフィスコストは連携していなければいけないのだが、岩田氏は「日本の経営者はそのことにあまり気づいていないのではないか?」と疑問を呈する。
「経営が苦しいときはオフィスにお金などかけていられませんが順調に成長しているのなら、移転のたびに賃料や内装工事費を上げていくのは、正統な投資なのではないでしょうか。それによって質の高い人材が集められ、さらにモチベーションを維持できれば業績はもっと上がる。つまりオフィスは先行投資の対象なのに、経営状況に関係なくコストを下げようと考えるのはおかしいのです」(岩田氏)

もし将来、米国のニューヨークに進出するなら、「エンパイヤステートビルは有力な候補物件です」(岩田氏)と笑う。
「そんな有名なビルにオフィスがあったら、米国人はそれなりに一目置くでしょう。そういう効果も含めて、投資に値するかどうかを考えるのが重要。
賃料の“安さ”だけでオフィスを決める時代は、もう終わったのかもしれませんね」(岩田氏)