ホーム > オフィス情報ポータル > 先進オフィス事例 > 株式会社リクルート 東京オフィス(グラントウキョウサウスタワー)

株式会社リクルート 東京オフィス(グラントウキョウサウスタワー)

各フロアの詳細拡大写真

専用のオフィス用品を新たに開発するほど「リクルートらしさ」にこだわったデザイン

それではリクルートの新本社オフィスを紹介していこう。

まず基本となる執務室のレイアウトは、8人ずつのデスクを1つの「島」にして固定したユニバーサルプランにしている。
「とにかく組織変更や人の異動が多い会社なので、机を動かさず人だけが移っていく方式は、手間やコストを減らすうえで絶対に採用したいと思っていました」(岡氏)

これまではオフィスが分散していたため統一したユニバーサルプランを導入することができず、異動のたびにレイアウトを変更していくのは、総務部にとって大変な手間だったという。
「レイアウトを固定式にしただけでも、工事費や備品購入費、私たちの人件費などのコストは大幅に削減できたわけで、統合による経営面のメリットは、こういうところにもあるのです」(岡氏)

ただユニバーサルプランは、オフィス全体が均質化してしまうという問題がある。そこでさまざまな工夫を加えた。
「一つめはカラーアドレスで、1フロアの中を黄、橙、赤、緑、青の5色に分け、8人分の島に『●丁目』とアドレスを振ったのです。これにより見た目の変化を感じられるだけでなく、『37階の赤の7丁目』というように席を表すことができます。これは社内で集まるときにも『ここに集合』と伝えられて便利ですね」(岡氏)

さらに新人や異動してきた人などのデスクの上に垂れ幕が下がっているのも、オフィスを無機質にしない工夫の一つだ。
「実はこれ、リクルートの創業以来の伝統なんです。何かにつけて垂れ幕を表示し、情報を提示していく。リクルートらしさを失わないためにも、この文化を新オフィスでも続けていくようにしたのです」(緒方氏)

多くの従業員からも「垂れ幕は残してほしい」と強い要望があったそうで、設計を担当するIBM側もそれに応えるように最大限の努力をしたという。
「グリッド天井のパネル枠のところならどこでも垂れ幕を吊り下げられるように、専用の金具を開発しました。今後、もし他の会社で同じような要望があれば、ぜひ販売したいほどの完成度の高さですね(笑)」(本藤氏)

垂れ幕用の取り付け金具までつくってしまったように、今回、従業員の要望をできるだけ活かしてオフィスづくりを進めた彼らは、他にも多くの"新製品"を完成させている。
「個人用のサイドデスク(ワゴン)には、メインデスクと同じ高さの天板を付けることで袖机として使えるようになり、限られたスペースで机上面積を増やすのに成功しました。またサイドデスクの引き出しも、上部は名刺ケースが入る深さに、下部はA4ファイルが2段入る大きさにしてあります。従来の製品ではここまで使い勝手を考えたデザインになっていなかったため、みんな不満を感じていたそうで、それに気づくことができたのですから、やはりユーザーの声を聞くのは大切だと思いましたね」(本藤氏)

「家具の仕様を決めるまでには、モックアップを事前に使っていただき、意見を部門代表会議でまとめてもらいました。スペースの関係上、デスク幅は1400ミリから1200ミリに縮小するしかなかったのですが、サイドデスクのおかげで狭さは感じないとの声が多く、承認を得たのです。そのほか、パーテーションの高さをそれこそ1センチ刻みで検討するなど、とにかく妥協しないオフィスづくりを一緒になって進めることができたのは、私にとっても貴重な経験でした」(前田氏)

5ヵ所の社内ダイニングにコンビニ、保育園で従業員にとって働きやすい環境の実現へ

次に、新オフィスのフロアプランを見ていこう。
もっとも特徴的なのは、19フロア中6ヵ所に設けられた飲食と物販施設だろう。その他にも、共有で使われる施設は以下のように充実している。

  • アカデミーホール/41階

    勉強会やキャリアプログラムなどに利用される階段教室型のホール。

  • ラウンジ「空箱(そらばこ)」/41階

    昼は社内ダイニング、夜は飲酒も可能なラウンジになる。

  • デリ「harema(はれま)」/39~40階

    カフェテリア形式の社内ダイニング。ビルの吹き抜け部分を利用したため広々とした明るい空間が特徴的で、パーティーなどにも利用される。

  • 立ち食いそば「侍(さむらい)」/36階

    「忙しいときに短時間で食事できる施設も必要」との声から生まれた飲食施設。

  • 和食処「ほこらん」/30階

    和食の社内ダイニング。

  • 事業所内保育園「And's(アンズ)」/M2階
  • リフレッシュスペース/各階
    喫煙者用のSmoking Roomと非喫煙者用のNon Smoking Roomを全フロアに設けた。

施設の内容を決めていくにあたっても、「従業員の声」を確実に活かすことに努めたという。
「たとえば『夜食にはラーメンが食べたいよね』という要望に応え、そういうメニューを用意したり、常にユーザーの満足度を高めるような工夫をしています。従業員のための福利厚生施設ではなく、業務委託の方など、一緒に働く仲間全員のコミュニケーションスペースとして、あえて『社員食堂』ではなく、『社内ダイニング』と呼んでいます。また、すべての社内ダイニングの名前は公募にし、『自分たちの施設だ』という意識を強く持ってもらうようにしました。利用率も高く、設置は成功だったと思っています」(岡氏)

オフィス移転&集約プロジェクトによって実現できたものと、これから目指す方向性

今回のオフィス移転&集約プロジェクトにより、11ヵ所に分散していた都内の事業所は3ヵ所に集約された。登記上の本社である銀座8丁目のビルは継続して使っていくものの、全従業員中約8割が働く新オフィスは、事実上のリクルート本社となる。
「ここの環境がいいことは、移転の対象とならなかった従業員も社内の広報メディアなどを通してよく知っています。したがって、これからは他のオフィスの改善が大きな課題となってくるでしょう」(岡氏)

一方で、統合の最大の目的である事業部門ごとの交流は進んでいるのだろうか。これについて答えてくれたのは、総務部ネクストオフィスプロジェクトのリーダーである新井正明氏だ。

「私たちが満員電車に乗ってまで出社する意味は、電話やメールではないリアルコミュニケーションをするためです。そう考えると、オフィスは人と人の多様な交流を活発にすることを目的に最適化された空間でなければなりません。新オフィスではフロアの真ん中にオープン階段を設置して自由な移動をできるようにしただけでなく、階段の踊り場部分からフロア全体を見回せるようにすることで、人の発見をしやすくしています。これらの工夫により、事業部門の枠を超えた交流は、確実に増えているはずです」
そしてそれは、オフィスが点在していたため失いつつあった企業文化、つまり「リクルートらしさ」を回復するプロジェクトでもあった。
「事業展開の都合で分散化してしまったオフィスは、リクルートにとって最大の経営資源である人材の価値を充分に発揮できないスタイルになっていました。そのマイナスを解消できたのは、今回のプロジェクトの最大の成果でしょう。しかしオフィスづくりはこれで終わりではありません。会社が成長していく限りオフィスも進化させ、リクルートらしさをもっと発揮できるものにしていきたいですね」(新井氏)