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ヤフー株式会社

各フロアの詳細拡大写真

来客フロアのユーザビリティ向上と屋外テラス設置という大胆な挑戦

このようにゾーニングを明確にしたことにより、オープンスペースとなる11階と執務スペースとなる12階以上とでは、デザイン上のコンセプトをまったく変えている。

11階の来客フロアに上がると、まず目に付くのはカーペットの色使いにおける工夫だ。エレベーターを降りたところから受付カウンターまで黄色いラインが引かれ、初めての訪問者でも迷わないように誘導していく。さらに、ロビーや応接コーナー、会議室の周囲のカーペットにも独自の「こだわり」による配色を施した。
「米国のヤフーはカリフォルニア州の砂漠の多いエリアで誕生した企業です。そこからつながる歴史を表現するために、砂と石畳の通路のイメージでデザインされたカーペットを使用し、フロア全体に敷きました。そこにオレンジやパープルなどのコーポレートカラーを配色したパーテーションや家具を置いています」(高橋氏)


約40m2のウッドデッキで作られたバルコニー。三方をガラスで囲み、 テーブルやチェアを配置したリラックスできる空間だ。
超高層ビルではあまり見られないスペースである。

そしてもう一つ、このフロアにはこれまでの日本のオフィスにはなかったまったく新しい「スペース」が設けられている。それは、約40m2の屋外テラス(バルコニー)だ。

超高層ビルでありながら外気に触れられる屋外テラスを設置できるというのは、ミッドタウン・タワーのセールスポイントの一つだ。オフィスの施設として絶対的に必要なものではないのかもしれないが、空調による人工的な空間があたりまえのオフィスに前例のない屋外テラスを設置した。テラスの開放感を室内からも味わえるように、三方をガラスで囲って他のスペースとの一体感を強調。厚さ30mmのウリン材(くすのき科)を用いたウッドデッキにテーブルやチェアを置き、リラックスできる空間となっている。

ブース式をやめて島型対向レイアウトに変更。固定席とパーテーションでセキュリティ対策

社外に向けての情報発信という目的からデザイン面の工夫や屋外テラスの設置などを行った11階に対し、12~20階の業務フロアはオフィスとしての機能を徹底的に追求したものとなっている。
「これまでのオフィスとの大きな違いは、ブース式をやめ、島型対向式のデスクレイアウトに変更したことです。これにより、運用の手間とコストを大幅に削減することができました」(高橋氏)

従来、ヤフーでは、エンジニアや管理部門などの社員は原則として高いパーテーションで囲まれたデスクで仕事をしていた。しかし、事業部の新設や従業員の増加という経営のスピードに合わせてオフィスを変更していくのは大変な作業だったという。
「六本木ヒルズが本拠地だった頃は、増える人数に合わせてなんとかスペースをつくり出すだけで、毎日、追われていました。さらにデスクや椅子だけでなくパーテーションの手配もしなければならず、施設管理の業務は膨大なものになっていたのです」(藤本氏)

「人においても事業においても、常に変化し、成長していく組織であるヤフーにとって、ブース式のオフィスは最善とはいえませんでした。このため、島型対向のユニバーサルプランによってフロアを構成し、『デスクは固定したまま、人だけが移動する』というスタイルは適切な方法の一つです」

もちろん、ブース式のオフィスに慣れていた社員からの反発は少なからずあったが、実際に変更してみると、むしろ評価する声のほうが多かったという。
「ブース式は集中作業にはいいのかもしれませんが、一方で、周囲が見通せないため、コミュニケーションが阻害されるという問題があります。社内では、プロジェクトや事業部門の枠を超えて情報交換しながら仕事を進めることも多いため、立ち上がったときにオフィス全体を見回せるような島型対向にもメリットはあります」(高橋氏)

実際、従業員からは「ブースの中を覗かなくても不在かどうかわかるので仕事の効率は上がった」など、評判は悪くないようだ。
「レイアウトは変更したものの、1人あたりのスペースは以前と同じ2坪、6.6を確保してあります。またデスクを仕切るパーテーションは40cmの高さがありますから、集中作業がしにくいわけではありません」(高橋氏)

なお、ヤフーでは一部営業系の社員を除けば、フリーアドレスによるノンテリトリアルオフィスの採用はまったく考えていないという。
「ヤフーの場合、パソコンはデスクトップが主体で、しかも1人1人が専用マシンを使っていますからフリーアドレスは不可能です。書類などを他の人が簡単に見ることができないようにするためにも、パーテーションで仕切った固定席は必要だと考えています」(藤本氏)

そのような条件の中で、ユニバーサルプランによる島型対向デスク配置はベストな選択だったと評価している。
「組織変更や異動があってもレイアウトの変更は必要ありませんし、『島』を増やすことで増員にも対応しやすくなっています。さらにブース式のころに比べて空調効率も高くなったのではないでしょうか」(高橋氏)

多様なコミュニケーションを可能にした共用スペースの拡張と集約レイアウト

執務スペースのレイアウトにおけるもう一つの特色は、共用スペースの充実だ。
「各フロアにテーブルとソファーを配したカフェテリア風のコミュニケーションスペースを設けました。日常的な打ち合わせに使われるだけでなく、ドリンクの自販機や電子レンジも置かれており、ランチやリフレッシュにと多様に利用されています」(藤本氏)

また会議室も以前のオフィスに比べて大幅に増やしたうえ、予約せずに使える「クイックミーティングスペース」を用意した。
「クイックミーティングスペースは背の高いスツールと小さなテーブルによるコーヒーショップのようなスタイルになっています」(高橋氏)

自然に会議時間も短くなるので、社員の評判はかなりいいようだ。

ブース式のレイアウトを採用していたころは打ち合せには必ず会議室を使わなければならなかったため、慢性的に不足していたそうだが、新オフィスではその点が大いに解消されただけでなく、コミュニケーションのスタイル自体が変わってきたという。
「多様なスペースがあることで、正式な会議から気軽な打ち合わせまでいろいろな形で従業員が集まり、情報交換ができるようになりました。コミュニケーションスペースやクイックミーティングスペースを活用するだけでなく、相手のデスクのところに椅子を持っていって話し込むケースもあるようで、コミュニケーションの促進が図れたのではないでしょうか」(高橋氏)

また、プリンタなどの設置場所を集約したことも、管理上において良かった点の一つである。以前は部門ごとに設置場所がバラバラだったが、新しいオフィスではコア部分の近くに4ヵ所、コピー・プリンタコーナーを固定したという。「各種マシンはメンテナンスが必要なため、執務スペースにおいて唯一、社外のスタッフが入ってくる場所です。それだけにコア部分に設置することで、デスクとの距離を保つことができます。また騒音面などの対策上も、このようなレイアウトは効果的だと思いますね」(藤本氏)

ヤフーらしいコミュニケーションスタイルにジャストフィットしたオフィスをつくりたい

ミッドタウン・タワーの新オフィスの運用を始めて半年近く経つが、今のところ、社員の満足度はかなり高いという。
「個人的には、ユニバーサルプランによる島型対向レイアウトは、ヤフーという会社に合っていると思います。もともと非常にフラットな組織で、リーダーと部長しかなく、その上は事業部長と役員という構造ですから、デスクやスペースについてもあまり多くの条件は求められていません。一応、部長席は独立して設けてありますが、中には『デスクが並んでいるほうがコミュニケーションがとりやすい』と部長席を嫌う人もいるほど。気軽に他の人と話せるオフィス構造は、ヤフーの雰囲気に合っているのかもしれません」(高橋氏)

今回、ヤフーから提供された写真の中に会議風景を写したものがある。社員だけが参加する打ちあわせの場面で驚くのは、床に座っている人が大勢いることだ。実は高橋氏も藤本氏も、初めてそれを目にしたときには戸惑ったという。
「椅子が足りないなら用意しますと言っても、『いいよ、いいよ。いつもこんな感じだから』と誰も気にしない。役職者であっても平気で床に座ったまま話を続けるのだから、最初は変わった会社だと思いましたね」(藤本氏)

しかしすぐに、それが「ヤフーらしさ」だと実感することになる。
「椅子のあるなしにこだわらず、コミュニケーションが図れればいいというのがこの会社の多くの人の発想なのかもしれません。だからこそ、コミュニケーションスペースを確保できた新しいオフィスはヤフーの方向性に合っていると思います」(高橋氏)

オフィスづくりに絶対的な正解はない。それぞれの企業が自分たちの組織や風土に合わせたスタイルを模索するところからスタイルが確立していく。ミッドタウン・タワーのヤフーのオフィスは、まさにそれを具現化していったものといえるだろう。


11階の来客フロア。エレベーターを降りると受付カウンターまで黄色いラインで誘導。初めての訪問者でも迷わないように工夫されている。