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株式会社WOWOW

「移転」は社員の意識を変革する絶好のチャンスプロジェクトの意義を伝える広報活動が重要だ

各フロアの詳細拡大写真

プロジェクト概要

  • 株式会社WOWOW
    平井 成人氏
    人事総務局長
    兼人事部長・秘書部長
  • 富士ビジネス株式会社
    土田 道博氏
    オフィス環境営業本部
    営業2部 部長
  • ゲンスラー アンド アソシエイツ
    インターナショナル リミテッド
    天野 大地氏
    シニア アソシエイト
  • 株式会社WOWOW
    西川 直之氏
    編成局
    プロモーション部
  • 富士ビジネス株式会社
    工藤 茂氏
    オフィス環境営業本部
    設計部設計2課 課長
    オフィスプランナー

衛星放送局の株式会社WOWOWは、2008年12月8日、港区赤坂5丁目の赤坂パークビルの20階と21階に本社オフィスを移転した。1984年12月、日本初の民間衛星放送会社として設立された同社は(当時の社名は日本衛星放送株式会社)、その後の成長とともにオフィスの拡張を続けている。1990年10月には江東区辰己に放送センターを竣工し、2000年には増築。また本社も、設立当時の港区虎ノ門から、中央区入船(1994年7月~)、港区元赤坂(1996年11月~)と移ってきた。元赤坂の旧本社は、ビルを1棟借りできたため使い方の自由度は高かったものの、オフィスが7層に分散。円滑なコミュニケーションが阻害されるという問題があったため、今回の移転ではできるだけ広いフロアの確保が最優先課題となった。赤坂パークビルの新オフィスは2フロアを使用。予定していた従業員すべてを収容できただけでなく、社外とのコミュニケーションの活性化に有効な広いゲストエリアも確保でき、働き方そのものが大きく変わったと、多くの社員が高い評価をしている。

先進オフィス事例研究 はやわかりメモ
フロアの数だけ組織は分断される
オフィスが何フロアにも分かれていると、ついつい行き来するのが億劫になり、部署を越えたコミュニケーションが疎かになる。その結果、フロアごとに業務が完結してしまい、ますます関係性が失われる。
「新オフィスは全社員がつくる」という意識へ
オフィスリニューアルのプロジェクトチームは各部門からのメンバーで構成し、メンバーが核となって全社員の声を集められるようにし ておく。プロジェクトの進行状況を社内報などで告知すると、より効果的。
「オフィスに曲線」という新発想のレイアウト
オフィスは直線的に構成するしかないと思いがちだが、オーバル(楕円)などの曲線を導入することで移動とともに視界が大きく変化し、 動的な空間になる。さまざまなコーナーや機器、什器などで構成されるオフィスだけに、配置を工夫すればスペース効率はそれほど悪くはならない。
社員の声をもとにシミュレーションを
オフィスエリアもゲストエリアも、どんな用途に使われるか、万全のチェックを行ってからデザインに進むべき。社員と議論を重ね、シミ ュレーションを続けながらレイアウトなどを決定していけば破綻は生じない。
ゲストエリアは会社を象徴するスペースに
第一印象を形づくるゲストエリアだけに、「どんな会社に見せたいか」というテーマを絞り、ブレのないデザインにしたい。また社外と のコミュニケーションにもさまざまなパターンがあるので、多様な空間の配置も重要。

フロアがいくつにも分かれると組織はバラバラになってしまう

「○階は、いったい何を考えているんだ」
株式会社WOWOWで本社オフィス移転プロジェクトのリーダーを務めた人事総務局長の平井成人氏にとって、最も思い出したくないのがこの言葉だった。

「WOWOWは1996年から港区元赤坂に本社を置いていました。ビル1棟を丸ごと借りていたため自社ビルと同じようにセキュリティ対策ができるなどのメリットがあったのですが、やはり300人強が勤務する事業所で7フロアというのは多すぎ、社内のコミュニケーションが円滑にはできなかったのです。放送局の場合、営業-編成-制作が事業の3本柱であり、お互いに連携し、協力しあわなければいけないのに、フロアが違うと、ついつい連絡が遅れ、齟齬が生じてしまう。その結果、同じ会社の仲間なのに社員を階数で呼び合う文化ができてしまったのです」

本社を移転したいという考えは、早くから社内にあった。「長く使い続けてきたオフィスはところどころに資料の詰まったダンボール箱が置かれ、家具なども古く、決して快適な空間とはいえません。そこで、5年くらい前から、三幸エステートさんにお願いをして、いろいろな物件のリサーチだけは続けてきました。『コミュニケーション促進のための広いフロアの確保』が絶対的な目標だっただけに、届けられる物件情報は、毎回、食い入るようにチェックしましたね」(平井氏)

そして2007年秋には本社移転が正式に決まり、物件探しも本格的になる。
「放送局という業種柄、港区、しかも赤坂周辺という立地条件は譲れませんでした。新しい本社オフィスで期待するコミュニケーションには社外の人との交流も含まれていたので、株主でもある民放各局や制作会社から遠くなってしまっては意味がないからです」(平井氏)

タイミングよく空室が見つかったのが、赤坂パークビルだった。
「ラッキーでした。約1300坪のフロアを20階と21階に確保でき、スペース的には充分です。理想をいえばワンフロアで収めたかったのですが、さすがにそのような物件は少なく、この条件の中で自分たちにとって使いやすい空間を設計していくことが、次の課題になりました」(平井氏)

全部門から抜擢されたメンバーが核となり社員の声を集めながら進めたプロジェクト

スタートした本社移転プロジェクトにおいて、平井氏のパートナーとしてサブリーダーを務めたのが編成局プロモーション部の西川直之氏だ。

「あるとき、平井さんから急に声をかけられ、メンバーになってしまいました。当社のブランド管理を担当している関係で、オフィスリニューアルの必要性は感じていましたが、実際に声がかかるとは思っていませんでした。」
そういって笑うが、実は西川氏の抜擢に、今回のプロジェクトの大きな特色が表れている。説明するのは平井氏だ。
「オフィスの移転は、社員の意識を大きく変え、経営の理想に向かって組織を改善していくチャンスでもあるのです。しかも、広いフロアが確保できたことでコミュニケーションを活発にする仕掛けはできた。あとは、できるだけ多くの社員を巻き込み、自分たちのオフィスが新しくなるということを実感してほしかったのです」

プロジェクトが本格的に始動する前、平井氏は経営トップとの調整のために社内のあちこちを歩き回っていた。その通り道に席があったのが西川氏だという。
「たまたま目が合ったとき、こういうプロモーションに携わり、ブランドに対する意識の高い社員に任せたら面白いのではないかとひらめいたんです。それで、くどきにかかった(笑)」(平井氏)

西川氏にとっても青天の霹靂だが、もともと制作畑の人間だけに、オフィス構築という「ものづくり」にはすぐに興味を持つことになる。 「移転プロジェクトを通して実感したのは、オフィスは会社や組織を変える大きな力を持っているということです。だからこそ、強い思い入れで設計から工事、運用にまで携わってきました」(西川氏)

また西川氏に続いて、各部門から「赤坂大移動プロジェクトメンバー」を選び、そのメンバーたちが核となって全社員の声を集めるシステムも完成させる。
「レイアウトから家具の選択まで、まさに全社員が力を合わせて進めてきました。途中、部署や個人の資料などを大量に廃棄してもらうキャンペーンなど、協力してもらう作業は数多くあったものの、みんなが嫌な顔せず協力してくれたのは、『自分たちで新しいオフィスをつくっていくんだ』という意識を持てたからだと思います」(西川氏)

「オーバル」デザインの導入で空間に変化をコミュニケーションを演出する多様な空間

それでは、具体的なフロアプランを見ていこう。今回、全体的なプロジェクト管理とオフィスエリアの設計・デザインを富士ビジネス株式会社が、21階のゲストエリアの設計・デザインをゲンスラー アンド アソシエイツ インターナショナル リミテッド(以下、ゲンスラー社)が担当している。 まず、オフィスエリアのレイアウトで特徴的なのが、コア部分にあるラウンド状の仕切りだ。
「執務室は直線で構成されるのが常識ですが、あえてオーバル(楕円)の構造を持ち込むことで、空間構成に変化を付けたかったのです」(富士ビジネス・工藤茂氏)

楕円で仕切った内側はユーティリティ・キッチン&コラボレーションスペースとし、コピー&ファックスの複合機、文具類のステーション、休息コーナーなどの共有施設を集め、インフォーマルコミュニケーションの舞台とする。そして仕切りの外側にラウンド状の通路を設け、そこを通ってデスク間を移動できるようにした。

この大胆なデザインには、WOWOW側も高い評価をしている。
「図面だけを見たときは、ただの変わったレイアウトかと思ったのですが、 実際に完成してみると、通路を歩きながら角度が変わるので、オフィスの印象が単調になりません。デスクが平行に並んでいるよりも、動的なイメージを受けますね」(西川氏)

オーバルによるオフィスレイアウトは、工藤氏が前からあたためていたアイデアだ。
「一見、スペースが無駄になるように思えますが、オフィスにある様々な什器や機械類をうまく配置すれば、効率はそれほど悪くはなりません。むしろ、変化に富んだコミュニケーションスペースを設置できるので、WOWOWの本社移転の目的を、充分に果たせるのではないかと思い ました」(工藤氏)

実は以前、工藤氏は別の案件で「入居後の組織改革の際、オフィスリニューアルで、普通の平行デスク配置にされていた」という経験があった。しかし今回は、移転後もオフィスの運用に関わるという条件だったため、自信を持って設計をしている。
「平井さんは『オフィスは移転後が大事だ』という考えをもたれていたので、リニューアルの管理までできるパートナーということで、私たちの会社を選んでいただきました。継続して関われるからこそ、こちらも大胆な提案をできるわけで、契約形態としては理想的な形だったと思っています」(工藤氏)

また20階のフロアは中央のコア部分によってオフィスが2つに分断してしまうが、その間をつなぐ機能として会議室を有効活用している。 「会議室とミーティングスペースをENGAWA(エンガワ)という名称のエリアにしました。セキュリティ上、執務エリアは外部の人は立ち入り禁 止にしていますが、ENGAWAは中間スペースとして、親しいパートナー会社や業務委託会社のスタッフ、社員たちが自由に出入りしてコミュニ ケーションを深めていくスペースなのです」(富士ビジネス・土田道博氏)

コミュニケーションの活性化が基本コンセプトだけに、オフィスづくりのさまざまなフェーズにおいて、プロジェクトチーム、社員、富士ビジネスなど関係者みんなが意見を交わし、何がベストかを考えていった。それだけに、細かいところまで神経が行き届いている。

「たとえば、外出先連絡表を旧来通りボードにするか、あるいはシステムで管理するのか、最後の最後まで議論しましたね。結果、みんなが気軽に見られるほうがいいということで、あえてボードを残したのです。その他、ユーティリティにたくさんの掲示板を配置するなど、全体として多様なコミュニケーションを演出できる空間になり、コンセプトは充分に実現できたと自負しています」(土田氏)