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MTV Networks Japan株式会社(本社オフィス)

各フロアの詳細拡大写真

フロアごとの個性を明確にすることで回遊性が生まれ社員の交流につながる

契約では、新オフィスの運用開始は2008年1月と決められた。約半年で全フロアをスポーツジム仕様からオフィス仕様に替え、スタジオまで建設するというタイトなスケジュールになっただけに、設計や工事において確かな技術と実績を持ったパートナーの選択が重要になる。また、通常フルパッケージサービスの場合、CWFがデザインまで行うが、Viacomグループの方針により、今回は別途パートナーを選択する必要があった。
「検討した結果、オフィス設計をお願いしたのがミダスさんでした。これまで手掛けてきたデザインが私たちのテイストに合っていただけでなく、外資系企業の仕事を請け負うことが多いことから通訳を必要とせず外国人スタッフとのやりとりもできます。この点は、スケジュールを短縮するうえで大いに役立ちましたね」(長谷川氏)

 コミュニケーションの点では問題はなかったものの、実際に設計作業を始めてみると、オフィスづくりで百戦錬磨の小澤清彦氏であっても、このプロジェクトの厳しさをすぐに実感した。

「設計を始めた段階では、プール用の浄水やボイラー設備が残っていたほどで、これは単なる用途のconversion(転換)ではなく、confusion(混乱、困惑)だと笑い話になったほどです」(小澤氏)

それでも、MTV側のコンセプトが明確だったため、デザイン作業はスムーズに進んだという。中心になって担当したのは清水はるみ氏だ。
「各フロアにテーマを設け、多様性のあるオフィスにしたいということでした。確かに個性的なフロアにしたほうが回遊性が生まれ、コミュニケーションの活性化につながります。その分、すべてのデザインをゼロから始めなければならず手間はかかりますが、デザイナーとしては本当に楽しい作業でした」(清水氏)

フロアごとのテーマを明確にした理由はもう一つある。
「ビデオやスチールなどの撮影は私たちの会社にとって日常茶飯事ですが、せっかく新しいオフィスをつくるなら、社内のどこででも写真が撮れるように、バリエーションに富んだ空間を用意しておきたかったのです。実際、執務室からエレベーターホールまであらゆるところで撮影ができて便利になったほか、社員たちも『見られる』ことを意識してきれいに使うようになったので、一石二鳥でしたね」(長谷川氏)

それでは、各フロアのテーマとデザインを見ていこう。

5F「宇宙(UFO)」

宇宙船の中をイメージするようなシンプルなデザインで構成。VIP用会議室と管理本部が入居している。

4F「オレンジ畑」

プールやトラックのあったフロアを転用したため、高い天井の広々とした空間になっている。天窓からの自然採光とペンダントライトにより、窓の少なさを感じさせない開放感を実現。営業、広報、マーケティングなどが入居。

3F「緑のリゾート」

全社員が利用するカフェを設置。森のリゾートをモチーフとしたデザインで、カジュアルな色づかいとリビングのような家具により、リフレッシュできる空間になっている。壁にはウォールクライミング練習用のブロックを設置した。
「ちょうど中間階にあたる3階にカフェを設置したことで、全社的なコミュニケーションの核にしました。カフェから続く広いバルコニーに唯一の喫煙コーナーを設けたことなどもあって誰もが1日に1回は顔を出すフロアとなり、自然な出会いが演出できたはずです」(長谷川氏)

2F「水辺」

フロア内の段差をあえて利用し、水路のある街のようなイメージでまとめた。ニコロデオン、CATV営業、デジタルメディア事業本部などが入居。

1F「ストリート」

モニターを埋め込んだメディアウォールによるエントランスで情報発信企業であることをアピール。そこから続くオフィスはテーマ通りにストリートから続く空間をイメージしてデザイン。スタジオとMTV部門が入居。
「音楽シーンの一つであるストリートのイメージを実現するために、実際にストリートアートを手掛けているクリエーターに頼んでペインティングをしてもらったり、ドラム缶でカウンターテーブルをつくるなどの工夫をしています。ガラス張りの会議室なども含め、開放的な空間になりました」(小澤氏)

B2F「光」

地下なのであえて「光」をテーマに、明るい空間を実現。エディット関連、技術、アーティスト関係の部署が入居。

コミュニケーションを活性化する個性的な空間と多様な動線の確保

今回の本社移転プロジェクトの重要な課題であるコミュニケーションの活性化について、新オフィスの運用を始めて約1年、MTV Networks Japanでは次のように評価している。
「最初の計画では、オフィスを統合することで部門を越えた会議がしやすくなることを期待していましたが、それ以上に、日常的な出会いによるインフォーマルコミュニケーションが活発になり、雑談ベースで新しいプロジェクトがどんどん生まれていく。その結果、MTV、ニコロデオン、デジタルメディアという事業の融合は確実に進んでいます」(長谷川氏)

この「予想を超えたコミュニケーションの活性化」には、清水氏も気がついていた。
「運用後に見ていると、私たちが考えた動線以外にも、自然に生まれた獣道のようなルートで社員が移動しており、社内のネットワークはかなり密につながっているはずです」(清水氏)

そんなコミュニケーション効果を、「こういうビルだから生まれた」と指摘するのは伊澤氏だ。
「フロアが完全に分かれず、吹き抜けなどを通して断続的につながっていたり、唐突に抜け道や小部屋があったり、この建物は隠れ家や秘密基地のような構造を持っています。当然、スペース効率は悪くなりますが、これらの『遊びの空間』のおかげで、利用者が自発的に移動やコミュニケーションのルートを探していく。もしかすると、これほど愛着がもてるオフィスはないのかもしれません」(伊澤氏)

そんなビルの個性を活かすために、リニューアルにあたってはさまざまな工夫を加えている。CWFの綱川藤男氏は語る。
「人の移動を活発にしたいところには階段を増設しましたし、エレベーターも既設のものは着床しない階があったので、新たに着床させるなどの大がかりな工事をしました。コミュニケーションを活性化させるには、移動を支援するさまざまな仕掛けが必要です。MTVNJ側もそのことをよく理解していたので、私たちも思いきった提案をしていくことができました」(綱川氏)

長谷川氏にとっても、コミュニケーションを促進するための提案は大歓迎だった。
「MTV Networks Japanは中途採用者から外国人まで多様な人材がいる組織であるため、彼らを一つにまとめていくことが経営上の大きな課題でした。さらにミュージシャンやレコード会社のスタッフ、さまざまなマスコミ関係者、視聴者など、社外の人々との協力関係なくして事業は成り立ちませんから、お客様との交流も非常に重要です。新しいオフィスでは動線をいくつも用意できたため、セキュリティの確保と社内外の活発な交流を両立することができました。そういう意味では、まさに理想に近いオフィスを実現できたのです」(長谷川氏)

「誇りがもてるオフィス環境」がトップ評価ブランディングにも大きな効果の個性派ビル

最後に、今回の移転プロジェクトにおける評価をまとめておこう。 移転後、3ヵ月目に実施した社員たちへのアンケート調査では、全35 項目中31項目(89%)で評価が向上しており、評判はかなりいいようだ。「最も評価が高かった項目は『誇りが持てるオフィス環境』で、評価が上がったのは『オープンな打合せコーナー』の設置です。社員のプライドの向上と、コミュニケーションの活性化が新オフィスの最大の課題だっただけに、この結果には満足しています」(長谷川氏)

また、キラー通りという名前の知られた道路沿いの、デザイン的にも非常に目立つビルに移転できたことで来客数も増え、社外とのコミュニケーションやブランディング戦略上もメリットは計り知れないという。
「音楽関係者にとっては便利な場所ですし、ミーティング用のスペースも飛躍的に増えたことから、これまで以上に多くのお客様が訪れ、社員たちと交流していくようになりました。また、ビルの壁面に遠くから見えるロゴを付けることもでき、ブランド強化には大きな効果があったと思っています」(長谷川氏)

オフィスビルとしては規格外の仕様でありながら、結果として満足度の高いオフィスが構築できたことに、伊澤氏は新たな可能性を感じていた。「リニューアルのための工事は決して簡単ではありませんでしたが、一方で、階高の高いゴルフレンジをスタジオにしたり、プール用の機械室を床荷重の大きさを利用してそのままサーバルームに転用したり、デッドスペースになりがちなちょっとした空きスペースに雑談コーナーをつくったりと、案外、有効に活用できるものです。これからは企業ももっと個性的なオフィスをつくっていくべきで、そのためには、もっといろいろなタイプのビルが供給されていくと面白いでしょうね」(伊澤氏)

オフィスビルにももっといろいろなタイプがあっていい

  • 株式会社レーサム
    飯塚 達也氏
    常務取締役
    事業企画ユニット ユニット長

スポーツジム仕様のビルを1棟取得し、再生していくのは、事業としてかなりの冒険でした。しかし、不動産のリアルバリューを高めて新たなユーザーに活用していただく。最終的には地域の活性化にもつなげるのが私たちの会社の役割ですので、1年近くにわたってさまざまな用途を検討してきたのです。最初は商業用途を考えましたが、途中で「オフィスとして使っても面白いのではないか」と発想を転換し、CWファシリティソリューションに協力をお願いしました。その結果、このビルの価値をわかっていただけるお客様に出会えたのですから、方針は間違っていなかったのでしょう。

オフィスに求める条件は、決して一様ではないと思います。その会社の社風や経営スタイル、事業内容などによって、それぞれ異なるはず。ところが、オフィスビルとして供給される物件がみんな似たようなタイプになってきているのは寂しいですね。私たちレーサムは、ビルの持つ潜在的な価値を積極的な投資によって引き出し、新たな市場を開拓していくスペシャリストですから、これからもこのような個性的なオフィスを提供していければいいと思っています。