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株式会社大広 東京本社

「わたし発想ではなく、わたしたち発想で考える」クリエイティブなアイデアが生まれるオフィス環境へ

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プロジェクト概要

  • 株式会社大広
    畠山 秀人氏
    総務局局長 兼
    総務1部部長
  • 株式会社大広
    小田 英司氏
    東京プロモーション・プランニング局
    第1プランニンググループ部長
  • 株式会社大広
    小佐田 透氏
    総務局付
  • 株式会社ミダス
    小澤 清彦氏
    取締役 設計グループ担当
    一級建築士
    認定ファシリティマネジャー
  • 株式会社ミダス
    浅沼 伸哉氏
    設計グループ
    チーフデザイナー
  • 株式会社ミダス
    倉品 正伸氏
    設計グループ
    デザイナー

大手広告会社の株式会社大広は、2008年6月2日、港区赤坂5丁目にある赤坂パークビルの7、8階および6階の一部に東京本社を移転した。1944年に関西地区の広告会社の統合で生まれた近畿広告株式会社を前身とする大広は、現在では東京・大阪・名古屋など全国6ヵ所の事業所と、国内外に17の連結対象グループ会社を持つ規模である。そして2003年10月には株式会社博報堂、株式会社読売広告社と共同持株会社である博報堂DYホールディングスを設立。12月には3社のメディア部門を分割移転して総合メディア事業会社、博報堂DYメディアパートナーズを設立した。今回の東京本社移転はこれらの経営改革の一環として行われたもので、新時代のワークスタイルを目指した「ファジーアドレス」「5style office」「マネジメントツールの装置化」といった斬新なコンセプトを実現し、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)主催の第3回ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)において奨励賞を受賞するなど、その成果は広く注目されている。

先進オフィス事例研究 はやわかりメモ
グループ経営視点によるオフィスの集約
大広は博報堂DYグループとしての経営視点、そしてメディア部門の協力関係の強化などを目的に、赤坂へのオフィス移転を計画。立地やビルのグレードの評価から赤坂パークビルを選択した。
コンセプトは「個から共へ」
移転で最大のテーマは働き方を変えること。特にコミュニケーションやコラボレーションをより一層重視する「個から共へ」のコンセプトを明確にし、新オフィスの方向性を定義した。
フリーアドレスを進化させたファジーアドレス
旧本社オフィスが約1800坪あったのに対し、新オフィスは約1500坪とスペースは縮小。フリーアドレスを検討する過程で、パイロット的に一部門でテスト導入し、そのフィードバックをもとに完全なフリーアドレスではなく、部門ごとに境界を曖昧にしてアドレスを割り当てる方式(ファジーアドレス)を実施した。
5style office
社員にとって、帰るべき「巣(Nest)」のような場所として部門単位のアドレスを設定し、そのエリアを中心にSession、Relax、Search、Thinkというワークアクティビティのための場を用意した5styleofficeにより、創造性を発揮するワークスタイルの活性化をはかった。同時に、部門長と事務担当を固定席とすることでマネジメントの効率化にも配慮している。
人気のロングソファーテーブル
ファジーアドレスのデスクの横にフロアを貫くロングソファーテーブルを設け、気軽な打ち合せができるように工夫。他にも出会いや情報交換の機会を演出する工夫で、「場所を選べるオフィス」を創造。すべて合わせると席数は人数分の120%にも及ぶ。
「Meet」&「Present」
ミーティングエリアの会議室は「出会いの場」を意図した「Meet」、プレゼンテーションルームは「顧客にプレゼントを渡す場」と捉え「Present」とネーミングすることでそこで行われる行為を強調。また中華テーブルや掘りごたつ風などの多様な空間も用意。
オフィスは人の働き方を変える!
移転後もオフィスは当初の企画内容通りに使われ、環境が変われば働き方も変わっていくことを証明できた。

グループによる事業所集約の機会を利用して経営ビジョンに合ったオフィス機能の見直しを

株式会社大広の東京本社は、約25年間、港区芝大門のダヴィンチ芝パーク(旧、秀和芝パークビル)に置かれていた。このため、場所と会社のイメージは広く定着していたのだが、2003年10月に株式会社博報堂、株式会社読売広告社と共同持株会社である博報堂DYホールディングスを設立。グループ視点からオフィスの移転が検討されることになった。
「持株会社の発足に続き、同じ年の12月に3社のメディア部門を分割統合して総合メディア事業会社『博報堂DYメディアパートナーズ』を設立しました。メディア事業は広告会社にとってのコアビジネスの一つであり、その分野で一緒に動く機会が多いことを考えると、お互いのオフィスはできるだけ近いほうがいい。最初に博報堂と博報堂DYホールディングス、博報堂DYメディアパートナーズが新築の赤坂Bizタワーに入居することが決まり、続いて私たちも近隣で物件探しを開始。そして、赤坂Bizタワーに近く、しかもビルグレードが高い赤坂パークビルにスペースが確保できるとわかり、移転計画は一気に進んだのです」

こう語るのは、総務部門として東京本社新オフィスの移転プロジェクト の事務局長をしてきた小佐田 透氏だ。

ちなみに読売広告社も同ビル内に本社を移転することが決まり、「博報堂DYグループの連携機能を高める」という目的を果たすことができた。
「会社としての機能向上を目指して移転するのですから、当然、オフィス内部の企画やデザインについても、それなりの取り組みが必要だと考えました。新しい時代のワークスタイルを実現するための新機能を盛り込みたい。そんな考えから、今回のプロジェクトではできるだけ多くの社員に参加してもらい、他人事ではなく『自分ごと』としてオフィスづくりを進めてもらおうと決めたのです」(小佐田氏)

この方針に基づき、やがて社内には、文書管理プロジェクト、引っ越しプロジェクトなど様々なチームが生まれ、かなりの社員が何らかの形で移転に携わっていくのだが、その先陣をきる新オフィスのコンセプトワークを進めるチームのリーダーに抜擢されたのが小田英司氏だった。
「大学で建築を専攻していた関係で、空間プロデュースなどの仕事もいくつか手がけてきました。今回のオフィスづくりを進めるにあたり、フレキシブルで創造的なワークスタイルの構築を念頭にプロジェクトを推進していきました」

プロジェクトの方向づけにリーダーシップを発揮してきた小田氏だが、コンセプトワークにおいては、社内のクリエイティブ・ディレクターやアカウントプランナー、若手~中堅の営業マン、システム部門のスタッフとの度重なるブレーンストーミングでまとめていったという。「オフィスは社員みんなが使うものですから、どんなにいいものであっても強制しては根づきません。それより、新オフィス構築を『自分ごと』だと思ってもらえるようにしていくことが最も重要だと考えたのです」(小田氏)

一定のコミュニケーション効果はあるものの組織管理の面からは課題の多いフリーアドレス

今回のオフィス移転にあたり、延べ面積の縮小という大きな課題が課せられた。
「芝大門では大広単体だけで4フロア、約1800坪のスペースを使っていました。しかし赤坂パークビルでは2.5フロア、約1500坪しか確保できないことはわかっていましたが、現状のオフィスの縮小版を目指すのではなく、アイデアの創造に最適でリアルなコラボレーションをどうやって実現していくかが最大の課題だったのです」(小田氏)

最初に頭に浮かんだのは、固定席を無くしたフリーアドレスオフィスだった。
「コンセプトワークを進めていた当時、多くの企業がこの新しいオフィススタイルを導入していたので、私たちも検討材料の一つにしたのです。確かに省スペース効果は大きいものの、一方で、うまくいかずに失敗したケースも多く、そのまま導入していいものか、充分な検討が必要だと感じました」(小田氏)

小佐田氏も、似たような感想を持ったという。
「固定席を無くす本当の意味は、省スペースよりもコミュニケーションの活性化にあるように思いました。それだけに、完全にフリーで座る場所がバラバラになってしまうような方法は、私たちの会社が目指す方向とは違うように感じたのです」

そこで、新設されたある部門と共同で、フリーアドレスのトライアル導入を行っている。その結果、コミュニケーション量の増加やメンバー間の情報共有の面では大きな効果が確認できたものの、やはりいくつかの問題点が浮かびあがってきた。
「一つは、仲間や先輩に囲まれた空間が仕事や成長に大きな効果をもたらすが、フリーアドレスではそれを阻害してしまうという点です。そしてもう一つ、目の届く範囲に部下がいないのは、表情や話しぶりなどから気持ちを察することができないので、マネジメントが困難になるという点も強く指摘されました。『1日中オフィスにいても部門のメンバーと顔を合わせないことがあるなら、組織をつくる意味がないのではないか』との部門長の意見が重要なポイントになりました」(小田氏)

こうしたフィードバックをもとに、ネスト(巣)というコンセプトを核とした新オフィスの構想が固まってくる。それが「ファジーアドレス」「5style office」「マネジメントツールの装置化」といったアイデアに結実した。
「ベースになったコンセプトは、『個から共へ』というものです。これは決して『個』と『共』を対立概念として捉えているのではなく、「個」が知恵を出しあい、刺激しあうことで、集団としての「共」(共有知)が強化され、そこでの経験が「個」としての突破力も強くする。そんな相互作用を目指しています。『強い個』を肯定しながら、個人の占有スペースよりも共有スペースを重視することでコミュニケーションの活性化やコラボレーションの促進を図っていくために、固定アドレスとフリーアドレスのいいとこ取りを可能にするにはどんな方法があるか、考え抜いた結果なのです」(小田氏)

なお、「個から共へ」というコンセプトは、「わたし発想ではなく、わたしたち発想で考える」という新しいワークスタイルのビジョンを示すキーフレーズとして社内にもアピールしていった。
「誰も体験したことのない新しいワークスタイルの導入には、必ず誰もが不安になるはずです。そのとき、構想に至った経緯を理論立てて説明できなければ社員の共感は獲得できません。そういう意味では、最初にコンセプトを明確にすることが、プロジェクトを軌道に乗せる最大のポイントといえるのではないでしょうか」(小田氏)


受付カウンター前の打ち合せスペース。