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株式会社大広 東京本社

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部門ごとに「巣」を形成していきながら中では自由席としたファジーアドレス

それでは「ファジーアドレス」「5style office」「マネジメントツールの装置化」について詳しく説明していこう。

ファジーアドレスとは……

  • ・「どこにも席がない」のではなく「どこにでも席がある」という考え方。
  • ・自分専用の固定デスクは存在しないが、局単位の固定エリアが存在する。
  • ・部門内マネジメント(固定アドレス型)と部門横断コラボレーション(フリーアドレス型)の両方の長所を取り入れた形態である。
  • ・原則として、自部門のネスト(巣)の中で、毎朝、好きな場所を選んで座る。
  • ・原則、ネストにおける席数は100%以上の設置を前提とする(対象社員数約500名)。
  • ・プロジェクトベースで、期間を決めて特定のエリアを占有することを認める。
  • ・プロジェクトベースでなくても、他部門の関係者が横の席で打ち合せをしたり、半日同席して業務を進めることが可能となる。

「組織内の縦のまとまりにメリットがあって管理しやすい固定アドレス(固定席)の長所をそのままに、横のつながりを密にしてスペース効率を高めるフリーアドレスのメリットを加えた方式です。個人デスクではなく部門占有エリア内では自由席とすることで、曖昧な許容を持った『自分たちの空間』を実現しました」(小田氏)

5style office とは……

  • ・自部門のベース(巣=Nest)を中心に、Session、Relax、Search、Thinkの5つのエリアを目由に選択できるというワークスタイルである。
  • ・これまでの「自席←→会議室←→ブース」という単線的なワークスタイルから、5つのエリアを移動することによる多面的なワークスタイルを実現する。
Nest
ビジネスの拠点となるエリアで、部門内のスタッフが自由に席を選択できる「場」。
Session
軽いミーティングが可能な「ロングソファーテーブル」、気軽に集まってブレストができる「アイデアキッチン」など、偶然の出会いからアイデアを生むフリースペース。また、多様な設えでそれぞれ個性を持つ会議室もSessionのエリアになる。
Relax
6面のモニターや展示コーナーなどがあり、リラックスして情報収集や情報交換ができる「ギャラリー&ラウンジ」。
Search
様々なジャンルの書籍や資料を揃えた図書閲覧スペース「ナレッジ・ライブラリー」。閲覧しながら企画もできるテーブル席も用意している。
Think
窓際に設置した「ビューカウンター」で、アイデア開発に集中できる。

「社員にとっては、今まで以上に多様なエリアを利用でき、これらを合わせると席数は人数比の120%以上用意しました。移転にあたっては、やはり固定席が無くなることにネガティブな反応を示す人もいましたが、こういう内容を説明することで理解・納得してもらうように努めました」(小田氏)

マネジメントツールの装置化とは……

  • ・ファジーアドレスには管理機能の固定化が必要。とりわけ組織の単位である局のマネジメントに注力が不可欠。
  • ・機密性が高く、密なコミュニケーションと、責任を高めるために、ライン局長には次のものを用意する。
  • 1.ミーティングテーブルのある個室
  • 2.ステーション機能

「部門占有エリアが曖昧な許容を持つだけに、核となる部門長の居場所は個室とし、しかもそこに打ち合せ機能を設けることでマネジメントをしやすくしました」(小佐田氏)

40mのロングソファーテーブルがフロアを貫く斬新なデザインでエリアの多様性を演出

このようにコンセプトと計画の方向性を明確にしたうえで、大広ではオフィスの具体的なデザインを依頼するためにいくつかの専門会社に話を聞いた。そしてパートナーに選んだのが、多くのオフィスデザインを手掛ける株式会社ミダスだった。
「提案されたデザインは必ずしもすべて採用したわけではありませんが、ミダスさんには『広告会社に相応しいクリエイティブなオフィスをつくろう』という熱意が感じられ、プロジェクトのパートナーになっていただきました」(小田氏)

一方、ミダスの小澤清彦氏も、今回のプロジェクトにおける大広側の意気込みの高さに感動したという。
「お話しを頂いた時点で、オフィスに対する明確な方向性やコンセプトが定まっていましたので、今回の役割は、デザイン事務所として如何にコンセプトの具象化をお手伝いするかであると思いました」(小澤氏)

フロアレイアウトを具体化する過程で一つのブレークスルーになったのは、「ロングソファーテーブル」の採用だった。
「5style officeによる多様なアクティビティの展開を可能にするには、デスクワークと会議という異なる機能を柔軟に併せ持つ『打ち合せも個人作業もできるコーナー』の設置が重要だということです」(浅沼伸哉氏)

窓際の「Think」用スペースであるビューカウンターとの境界にもなるロングソファーテーブルは1ラインが40mほどになり、他に例を見ない大胆なレイアウトになっている。
「レイアウト上の様々な制約条件に対応するうちに、一時、オフィスの設えがこのまま標準的なものに納まってしまうのではないかという危惧を抱いた時期がありました。丁度そんな時ロングソファーテーブルというアイデアが浮上してきたのです」(小田氏)
「デザインを詰める段階では一番煮詰まっていた時期でした。そんなとき、 ミダスさんがたまたま出張で行ったオランダのカフェレストランの写真を 見て、すぐに『そういう感じにしよう』と決めたのです。そして色も、オレン ジや赤などの強いものを使うことで、このエリアを目立たせるように工夫 しました」(小田氏)
「意匠的な部分への落とし込みにおいては、あくまでも大広さんのコンセ プトやアイデアを継承し引き立たせるためのデザインというものを第一に 考えました」(ミダス・倉品正伸氏)

今回、デザインワークは浅沼氏と倉品氏が中心となって進めたが、小澤氏はリーダーとしてその作業を見つめながら、一つ気づいたことがあるという。
「ここに使ったソファーは、比較的、硬めのもので、座り心地でいえば決して最高ではありません。しかしファミレスのような日常のカジュアルな空間体験を喚起させるイメージを実現するには最適なアイテムだったのです。僕らは機能性に関して、人間工学的な観点からのみ判断する傾向がありますが、この場合は『気軽に情報交換をする場所の実現』にとって、こういうソファーのほうが実は機能的なのです。大広さんとの打ち合せの中で、そういうことにも気づかせてもらいましたね」

会議室に「Meeting Room A」ではなくあえて「Meet A」と名付けた理由

ここで、大広の新本社オフィスのその他のコーナーについても紹介し ておこう。

総合受付&ラウンジ

エントランスからは斜めに置かれた受付カウンターが奥行きを感じさせるようなデザインになっている。その前にはカフェをイメージしたラウンジが設けられ、接客や簡単な打ち合せができるようになっているほか、ガラス張りでウッドブラインドにより目隠しも可能な応接室も用意されている。

ミーティングエリア


カラフルな床のFLEXルーム。

いわゆる“会議室”が並ぶエリア。グループインタビューに最適な中華テーブルスタイルの部屋、カラフルなカーペットがカジュアルな感性を刺激するFLEXルーム、「和」の空間を演出した掘りごたつスタイルの部屋、ガラストップのホワイトボードとプロジェクターでアイデアを出しあう部屋、大型プロジェクターを設置したプレゼンテーションルームなど、多様なデザインのスペースを用意している。

「地味ではなく、しかも落ち着いた雰囲気にするにはどうしたらいいか、社内のデザイナーを交えて何度も検討を続けてつくったエリアです。個々の部屋のネーミングも、『~ルーム』とせず、「Meet」「Present」というようにそこで行われる行為を名称にしたことで利用する目的を明確にした。また、それぞれのドアに使用する最適な人数をアイコンで示すなど工夫を加えました」(小田氏)

アイデアキッチン

部門間の橋渡しとして設置された、自由に使える場。ダイニングルームのように気軽に立ち寄りながら、そこで出会いと情報交換をしながらアイデアを生み出していくスペースにしている。喫煙室・ベンダー室とも隣接し、壁にはモニターなども設置され、刺激を感じられるような演出も行っている。

ビューカウンター

窓際に設置された集中作業用のスペース。会話量の多いコア側執務エリアからはロングソファーテーブル、そしてキャビネットにより遮られており、気が散らない空間になっている。

ナレッジ・ライブラリー

広告会社だけに、様々なメディアやマーケティング資料を閲覧用に用意。以前はただの図書館のようになっていたのに対し、移転後はラウンジをイメージした明るい空間に一変した。

「オフィスが変われば、働き方が変わる」その言葉の正しさを証明したプロジェクト

新本社オフィスへの移転にあたり、小田氏が心配していたことに、運 用開始後の管理の問題があった。
「昔は広告会社のオフィスといえば書類が溢れていました。私自身、山積みの書類の中で仕事をしていたほどです。今回の移転にあたり大胆に書類の整理とペーパーレス化を進め、個人の書類関係は1人あたり段ボール2箱分になりました」(小田氏)

ファジーアドレスであるため、運営上は、デスクの上に書類を残すことはできず、「段ボール2箱分」が収納できるキャビネットとロッカーだけが個人の使えるスペースとなる。これまでの経験から、これらのルールが守られるのか心配していたが、移転から1年弱たった現在、オフィスはオープン当初の姿を保ち続けている。これには、昨年東京本社に異動し、この4月新しく総務局長に就任した畠山秀人氏も驚いているほどだ。
「実は東京に先んじて大阪本社を2005年11月に移転したのですが、固定席ということもあり、時間が経つ とともに書類で溢れてしまったのです。それに比べると東京本社はきれいで、オフィスは人を動かし、働き方を変えていくのだと、改めて気づかせてもらいましたね。また、ファジーアドレスであるため大がかりな レイアウト変更の必要もなく、コスト削減にもつながっていると思います」(畠山氏)

そんな効果こそが、オフィス移転の最大の目的である。
「経営トップが『オフィスが変われば働き方も変わる』という考え方を持ち、変革に積極的だったことが、私たちの背中を押したのです。オフィスと経営は一体化したものなのですから、トップの理解なくして改革などできません。そういう意味では、社員、経営、そして社外のパートナーと強いチーム力を発揮できたのが、プロジェクトを成功に導いた最大の理由だと思っています」(小佐田氏)