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株式会社三陽商会

11カ所の拠点を統合。スペースを半減しながら満足できる環境と大きな成果を生んだプロジェクト

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プロジェクト概要

  • 株式会社三陽商会
    髙﨑 三千夫氏
    人事総務本部
    総務部長
  • 株式会社三陽商会
    遠藤 一美氏
    人事総務本部
  • 明豊ファシリティワークス株式会社
    緑川 博明氏
    オフィス本部
    マーケティング部専任部長
  • 明豊ファシリティワークス株式会社
    柳沼 幸隆氏
    オフィス本部
    PM部第三チームリーダー

SANYO(サンヨー)、Paul Stuart(ポール・スチュアート)、FRAGILE(フラジール)など多数の自社ブランドとBURBERRY(バーバリー)の事業展開で知られるアパレルメーカー「株式会社三陽商会」。2008年5月、東京都港区の汐留ビルディングの21~24階に本社オフィスを移転した。それまでは新宿区の四谷本社(本塩町)を始め、江東区潮見、港区南青山など多くのオフィスが分散。社内のコミュニケーションが充分にとれているとはいえなかった。

そこで今回の移転を機に、南青山のオフィス以外をすべて統合した。事業と経営の中枢となる新本社への統合のために移転の1年前から綿密に準備を開始。新しいワークスタイルの検討や移転に向けた意志と情報の徹底、そして新築ビルであるメリットを活かして設けた占有エリアの内部専用階段、前例のない「内部専用エレベーター」など、多くの企業にとって今後のオフィスづくりの参考になりそうな事例に注目が集まっている。

先進オフィス事例研究 はやわかりメモ
自社ビルから賃貸ビルに移転して統合
業態の拡大やブランドの多様化により首都圏11カ所(+広報部門)に分散していた。四谷の本社ビルは築40年前後で事業継続計画の観点から建替えを検討。それを機会に統合移転を進めることを決意する。
「面積はほぼ半減」という厳しい条件
急成長して大きくなった組織に再度活力を入れて、オプト文化の原点に戻ることも移転の目的。よって、今回の移転をいい機会として大幅な組織変更も同時に行った。
神保町という「穴場」
オフィス仲介会社の協力を得て新オフィスは浜松町駅に直近の汐留ビルディングに決定。その後、オフィスづくりの専門会社と一緒にプロジェクトを進めることとなる。総面積は47%削減に。
1年間かけたオフィスづくり
徹底して社内の調査を行い、ワークスタイルの分析やスペース利用の問題点の抽出などを進める。次に社員参加型のワーキンググループを立ち上げ、どんなオフィスにしたいか意見を出してもらう。これにより新オフィスのコンセプトを固めていくとともに、社内の情報共有や移転への意志の統一を図っていく。
統合の目的はコミュニケーション
分散していたオフィスの最大の問題は社内のコミュニケーション不足。したがって新オフィスでは“人と人の交流”を最優先に考えたデザインプランをまとめた。その結果、さまざまな出会いの場から派生したインフォーマルコミュニケーションが活発に。
「内部専用階段」だけでなく「内部専用エレベーター」も
コミュニケーション促進と商品やサンプルの移動用のため占有スペース内に内部専用階段と内部専用エレベーターを新設。建築中に交渉したため大きな工事の必要なく設置ができた。上下フロアの移動が楽になるだけでなく、その周辺は貴重な交流スペースとなっている。

社員の通勤を考えた立地を考慮して候補ビル探しを進める

日本を代表する大手アパレルメーカーの三陽商会。レディスからメンズ、アクセサリーまでの多くのブランドと共に、長く本社を置いていた四谷(東京都新宿区本塩町)のイメージを持つ人も多いはずだ。

「創業の地は千代田区の神田でした。レインコートを主力としていた会社から総合アパレルメーカーに成長していく過程の中で1969年に四谷に自社ビルを建設。以来、40年近くにわたって本社を置いていました。事業の拡大に伴って、四谷エリアに多くのオフィスを所有または借り、「SANYO村」みたいになっていましたから、当社と四谷のイメージを結びつける方は多いと思います」

そう語るのは、今回の移転プロジェクトのリーダーを務めた人事総務本部総務部長の髙﨑三千夫氏だ。

しかし三陽商会の事業拠点は四谷だけに留まらず、1981年には東京都江東区潮見にも商品センター、さらに1990年には同センター隣地に事務棟を完成させている。
「潮見のビルにも全従業員数の約4分の1にあたる500人が勤務していて、主にメンズの事業部門が置かれていました」(髙﨑氏)

分散による弊害は多かった。
「例えば同じブランドでもレディスとメンズの担当者では四谷と潮見に分かれていて簡単に交流できないとか、四谷でも複数のオフィスがあるため、同じ会社の社員なのにほとんど顔を合わせたことのない人がたくさんいるといった状態でした。社内のコミュニケーションを促進しようにも解決策はなく、半分、あきらめるしかなかったのです」(髙﨑氏)

ところが、耐震問題などから四谷の本社ビルの建て替えが決まったことで、事態は一気に動き出す。
「新しく本社ビルを建て替えることを検討することを含め、いったん本社オフィスはどこか別のビルに移転・統合させてはどうかというアイデアが出たのです。そこで、長年のお付き合いのある三幸エステートさんに相談したところ、浜松町駅の目の前に大規模ビルが建設されるという情報をいち早くいただき、絶好のチャンスを得ることができました」(髙﨑氏)

移転を考え始めてから何棟ものビルを調査したものの、立地や広さなどの問題で希望に叶うものは多くはない。その点、建設予定の汐留ビルディングは申し分のない条件だった。
「四谷に長くいたことから社員たちの居住地は新宿や池袋からの鉄道沿線も多く、また統合の対象と考えていた潮見ビルに務める社員は東京の東側や神奈川、千葉方面に住んでいるケースが多い。できるだけ通勤の負担が増えないような場所を全員の住所データから専用ソフトなどでシミュレーションした結果、浜松町であれば通勤時間、交通費等の問題はおおむね解決されるという結論に至り、オフィス移転のプロジェクトが本格的に進むことになったのです」(髙﨑氏)

47%ものスペース削減を実現するには仕組みそのものから変革する必要がある

検討の結果、四谷と潮見のオフィスに勤務する11拠点、約1600名の社員が新本社への移転対象となった。建設中のビルでは21階~24階の4フロアを確保する条件で交渉が進む。しかし髙﨑氏には、解決しなければいけない大きな課題があった。
「統合する11拠点の総面積は約8500坪あったのですが、移転後はこれを約4500坪まで減らすことになります。スペースを47%削減するという計画はオフィスづくりのプロの手を借りないと難しかったでしょうね」

パートナーに選ばれたのは明豊ファシリティワークスだった。
「明豊さんはいきなりレイアウト案を示すのではなく、移転統合プロジェクトの計画づくりから実行、評価まで含めた総合的なオフィスづくりの大切さを強くアピールされてきました。統合やスペース削減となると、単にオフィスレイアウトだけの問題ではなくワークスタイルそのものから変えていく必要があります。その点まで含めて専門家のアドバイスがいただけて心強かったですね」(髙﨑氏)

大きな期待を受け、明豊ファシリティワークスが最初に行ったのは、三陽商会における働き方の調査だった。
「オフィス面積をほぼ半減となると仕組みそのものを変えていかなければなりません。そこで、スタッフを数日間にわたり、三陽商会さんのオフィスに張りつけ、どんなワークスタイルなのか、あるいはオフィススペースはどのように使っているのか、徹底的な調査を行ったのです」(明豊ファシリティワークス・緑川博明氏)

そこで緑川氏がポイントにしたのは「ブランドを超えたスペース共有化と工業技術センターなど特殊設備の集約化」だった。
「会議室や収納など複数の部門で共通したスペースは共有化することで最も統合のメリットが出やすい。そうやって少しずつ目標の面積に近づけていったのです」

ただし、このような計算をするときに忘れてはいけないことがある。それは、「スペースの共有化にあたっては、事前に情報の共有化の必要がある」ということだ。緑川氏が語る。
「同じ会社の中でもブランドごとに微妙に仕事のルールが違うことがあります。今まではビルが別だったので問題なかったのでしょうが、スペースなどを共有するとなればそうはいかない。とはいえ、移転直前に『共有化します』と発表したら、社員の反発を招くだけでプロジェクトは成功しません」

髙﨑氏によると、移転に関する反発は当然あったという。
「新しいオフィスに移るとなれば、自分のスペースも広がるものだと誰もが考えます。そんな期待に反して、面積は半減するとはなかなか言えません」

そこで明豊ファシリティワークスが提案したのが、1年前から着々と準備を進め、移転統合の意義を理解してもらうとともに、スペースが減っても使いやすいオフィスにする方法をみんなに考えてもらうことだった。その活動のサポートを続けてきたのがオフィス本部PM部の柳沼幸隆氏である。「不満をなくし、快適なオフィス環境にしていくには、社員のみなさんに参加意識を持ってもらうのが一番です。そこでいくつものワーキンググループをつくり、3カ月ほどは週に1回のペースで、密度の濃い話し合いを続けてもらいました」

解決すべき課題は多岐にわたった。
「スペースを削減するには会議室や収納スペースの共有化以外にも、不要な書類などの破棄、最小限必要な書類などの保管方法の検討、デスクレイアウトの工夫、設備の見直しなど、決めなければならないテーマが山積しています。そしてそれらの一つでも疎かにしてしまうと本当に満足できるオフィスにならないのです」(柳沼氏)

そうやって意見交換を重ねていくことで、課題になっていた共有化についても徐々に線引きが明確になってくる。そして社員たちから出たさまざまな要望に対し、具体的な設計プランで応えていくのが明豊ファシリティワークスの次の役目だった。


24階に設けられた透明感のある来客エリア。